Intro: 牧歌の呼びかけ(Ranz des vaches)
【仕組み】第4楽章「雷雨・嵐」の去った後、クラリネットがアルプスの牛追いの角笛の動機を吹き、ホルンが穏やかに応える。
【位置づけ】「絵画的描写ではなく、感情の表現である」というベートーヴェンの創作理念のもと、荒れ狂う自然の脅威から人間と自然の調和・感謝の境地へと架け橋を渡す象徴的な導入。
主旋律(感謝の歌)の提示
【仕組み】弱音(sotto voce)で第1ヴァイオリンがヘ長調の平穏な主題を提示。ヴィオラとチェロの8分音符ドローン低音が支える。
【位置づけ】「感情の表現であり、絵画的描写ではない」というベートーヴェンの言葉を最も純粋に体現した旋律。
第1変奏:第2ヴァイオリンへの受け渡しと木管の寄り添い
【仕組み】主題が第2ヴァイオリンへと受け渡され、クラリネットと第1ホルンがユニゾンで寄り添う。第1ヴァイオリンは高音の対旋律へ、低音はファゴットとピチカートへ変化する。
【位置づけ】
第2変奏:全合奏の感謝の波(第1のクライマックス)
【仕組み】トランペットとトロンボーンが全奏(Tutti)とともにフォルテで加わり、低音弦が16分音符の流れるような走句(波)に変容して爆発的な推進力を生み出す。
【位置づけ】
副主題・展開部(穏やかな田園の対話)
【仕組み】全合奏の熱気が収まり、弱音(ピアノ)へ移行。木管楽器と弦楽器が短いフレーズをささやき合うように応答し、変ホ長調などの柔らかな転調を経て原風景へと向かう。
【位置づけ】
主題の再現(原風景への回帰とさざ波の萌芽)
【仕組み】フルートとクラリネットの合図を経て、主調ヘ長調に戻り主題が再現。第2ヴァイオリンが主旋律を歌い、第1ヴァイオリンがその上で16分音符のオブリガート対旋律を走らせる。
【位置づけ】
第3変奏:細分化された波(16分音符のさざ波変奏とうねり)
【仕組み】第1ヴァイオリンが主旋律を取り戻し、弦楽器全員の16分音符アルペジオへと拡大。いったん静まった後、チェロとファゴットの低音オブリガートから弦全体が激しいうねりとなり、最高潮へのクレッシェンドを築く。
【位置づけ】装飾と音型細分化によって感情を高揚させる、ベートーヴェン変奏技法の粋。
第4変奏:至高の凱歌(天上のアポテオーシス)
【仕組み】溜め込まれたエネルギーが解き放たれ、トランペット・トロンボーン・ティンパニを含む全管弦楽(Tutti)が最大のフォルティッシモで感謝の賛歌を轟かせる。
【位置づけ】
Coda: 静寂への夕暮れと最後の祈り
【仕組み】全奏の響きが急速に静まり返り、弱音器(ミュート)を付けたホルンが遠くの山彦のように牧笛の動機を回想する。最後は簡潔で確固たる2つの全奏和音で穏やかに全曲を閉じる。
【位置づけ】