Prelude 1 in C major, BWV 846
a 5.【仕組み】均質な16分音符のアルペジオが重なり、純粋無垢な自然倍音の美しさを提示する無旋律の傑作。
【位置づけ】五度圏の頂点に位置する母港(シャープ・フラットなし)。
Fugue 1 in C major (4 voices), BWV 846
a 4.【仕組み】間奏部を排し、主題のストレット(密集進行)が全編にわたって連鎖する緻密極まる4声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 2 in C minor, BWV 847
a 2.【仕組み】無窮動の16分音符運動から、Presto・Adagio・Allegroへとテンポを揺らす劇的な即興トッカータ。
【位置づけ】C majorと同じ主音を持ちながら、短三度と短六度が落とす暗転の衝撃。
Fugue 2 in C minor (3 voices), BWV 847
a 3.【仕組み】リズムの跳躍を持つ親しみやすい主題が、規則的な対旋律を伴って整然と対話する3声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 3 in C# major, BWV 848
a 2.【仕組み】3/8拍子の軽快なリズムで、両手が目まぐるしく駆け巡る極めて華やかな長調トッカータ。
【位置づけ】五度圏上、シャープ極限の領域。異名同音Db majorの領域。
Fugue 3 in C# major (3 voices), BWV 848
a 3.【仕組み】分散和音風の快活な主題が対旋律と絡み合い、推進力を生み出す3声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 4 in C# minor, BWV 849
a 3.【仕組み】持続する通奏低音の上で、高音の2声がため息のような不協和音を重ねるトリオ・ソナタ様式。
【位置づけ】第1巻屈指の精神的深淵。
Fugue 4 in C# minor (5 voices), BWV 849
a 5.【仕組み】全巻中わずか2曲しかない5声フーガ。十字架音型の第1主題に2つの対主題が合流する荘厳な三重フーガ。
【位置づけ】バッハ対位法の最高峰モニュメント。
Prelude 5 in D major, BWV 850
a 2.【仕組み】右手が一瞬の淀みもなく16分音符を紡ぎ、左手が軽快なピチカート風の打音を添える常動曲スタイル。
【位置づけ】二つのシャープがもたらす祝祭的・開放的な響き。
Fugue 5 in D major (4 voices), BWV 850
a 4.【仕組み】32分音符の駆け上がりと複付点リズムを特徴とするフランス風序曲様式の主題による堂々たる4声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 6 in D minor, BWV 851
a 2.【仕組み】右手が紡ぐ絶え間ない8分3連符の流れの中で、短調の緊張感が均質なテクスチュアとして持続する。
【位置づけ】フラット1つのニ短調。
Fugue 6 in D minor (3 voices), BWV 851
a 3.【仕組み】トリルを含む優美な主題と、その反行形(上下反転)、さらに密集配置(ストレット)を駆使した精緻な3声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 7 in Eb major, BWV 852
a 4.【仕組み】華麗な即興トッカータで始まり、中間で厳格な二重フーガを内包して壮麗に結ぶ、前奏曲の概念を超えた巨大作。
【位置づけ】三つのフラット。英雄的・宗教的な気品を備えた調性。
Fugue 7 in Eb major (3 voices), BWV 852
a 3.【仕組み】前曲の重厚さとは対照的に、ヴォーカル的で軽やか・親しみやすい旋律が軽快に受け渡される。
【位置づけ】
Prelude 8 in Eb minor, BWV 853
a 3.【仕組み】3/2拍子の重厚なサラバンドのリズムに乗せて、息の長い装飾された嘆きの旋律が深々と歌われる。
【位置づけ】六つのフラット。第1巻で最も暗く孤独な霊域。
Fugue 8 in D# minor (3 voices), BWV 853
a 3.【仕組み】楽譜上は変ホ短調(6♭)から嬰ニ短調(6♯)へ書き換えられ、主題の拡大(音価2倍)やストレットを駆使した深遠な対位法が繰り広げられる。
【位置づけ】五度圏最深部(対蹠点)での異名同音結合。
Prelude 9 in E major, BWV 854
a 3.【仕組み】12/8拍子の牧歌的なゆらぎの中で、3声部が愛らしく掛け合うコンパクトで晴れやかな前奏曲。
【位置づけ】四つのシャープが描く瑞々しい自然の光。
Fugue 9 in E major (3 voices), BWV 854
a 3.【仕組み】わずか2小節足らずの快活な主題が小気味よく模倣され、屈託のない明るさで駆け抜ける。
【位置づけ】
Prelude 10 in E minor, BWV 855
a 2.【仕組み】低音の規則的な刻みの上で切ない右手が歌う前半から、後半は両手が激しく交錯するPrestoの嵐へ雪崩れ込む二部構成。
【位置づけ】ホ短調(1シャープ)。哀感と情熱の同居。
Fugue 10 in E minor (2 voices), BWV 855
a 2.【仕組み】全48曲の中で唯一となる完全な2声フーガ。休むことのない16分音符の走句が緊迫感を持続させる。
【位置づけ】
Prelude 11 in F major, BWV 856
a 3.【仕組み】12/8拍子の舞曲リズムを土台に、平易で屈託のない長調の喜びをコンパクトに提示する。
【位置づけ】フラット1つのヘ長調。母港ハ長調に隣接する下属調。
Fugue 11 in F major (3 voices), BWV 856
a 3.【仕組み】3/8拍子のフランス宮廷舞曲「パスピエ」のリズムを持つ主題が、小気味よいシンコペーションを伴って展開する。
【位置づけ】
Prelude 12 in F minor, BWV 857
a 4.【仕組み】ゆったりとしたアルペジオの分散和音の中に、半音階的なため息が幾重にも織り込まれた重厚な前奏曲。
【位置づけ】ヘ短調。第1部(前半12調)の終点。
Fugue 12 in F minor (4 voices), BWV 857
a 4.【仕組み】半音階でうごめく主題と対旋律が複雑に絡み合い、第1巻前半の総決算として圧倒的な対位密度を誇る4声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 13 in F# major, BWV 858
a 2.【仕組み】12/16拍子の細やかな音符が淀みなく流れ、後半部(第13〜24番)の幕開けを繊細極まる透明感で祝福する。
【位置づけ】嬰ヘ長調。五度圏の最下部に位置する神秘の長調。
Fugue 13 in F# major (3 voices), BWV 858
a 3.【仕組み】トリルを含む優美な主題が3つの声部で整然と受け継がれ、平均律ならではの調律の完全性を証明する。
【位置づけ】
Prelude 14 in F# minor, BWV 859
a 2.【仕組み】跳躍する主題と走句が二声の対位法として緊張感高く交錯する、研ぎ澄まされた前奏曲。
【位置づけ】嬰ヘ短調。内省的で痛切な情熱。
Fugue 14 in F# minor (4 voices), BWV 859
a 4.【仕組み】下降する半音階の「ため息のモチーフ」を核とし、4つの声部が重厚な悲劇性を織り上げていく。
【位置づけ】
Prelude 15 in G major, BWV 860
a 2.【仕組み】左右の手が超快速の走句を交互に繰り出し、わずか1分弱で鮮やかに駆け抜けるヴィルトゥオーソ風前奏曲。
【位置づけ】ト長調(1シャープ)。五度圏上で母港Cに最も親密な属調。
Fugue 15 in G major (3 voices), BWV 860
a 3.【仕組み】6/8拍子の快速舞曲ジーグの性格を持ち、長い主題がダイナミックに各声部を駆け巡る。
【位置づけ】
Prelude 16 in G minor, BWV 861
a 3.【仕組み】穏やかな和音進行に乗せて、声楽曲のような気品に満ちたメロディがポリフォニックに絡み合う。
【位置づけ】ト短調(2フラット)。モーツァルトにも通じる高貴な哀愁の調性。
Fugue 16 in G minor (4 voices), BWV 861
a 4.【仕組み】休符を効果的に配した輪郭明瞭な主題が、後半にかけて見事なストレットを形成する格調高い4声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 17 in Ab major, BWV 862
a 4.【仕組み】協奏曲のソロとトゥッティを想起させるブロックの対比が、変イ長調の包容力ある響きを際立たせる。
【位置づけ】変イ長調。深く温かい光をたたえた調性。
Fugue 17 in Ab major (4 voices), BWV 862
a 4.【仕組み】4つの声部が無理のない自然な音域で均等に語り合い、長調の調和を静かに讃える。
【位置づけ】
Prelude 18 in G# minor, BWV 863
a 3.【仕組み】3声の室内楽のような均整美を持ち、装飾音をまとった旋律が控えめな哀愁を帯びて流れる。
【位置づけ】嬰ト短調。ロ長調の平行短調。
Fugue 18 in G# minor (4 voices), BWV 863
a 4.【仕組み】主題に対して2つの規則的な対旋律が厳格に寄り添い、多層的なポリフォニーの美を織り成す。
【位置づけ】
Prelude 19 in A major, BWV 864
a 3.【仕組み】フルートのアンサンブルを思わせる軽やかで透明な3声のパストラーレ。
【位置づけ】イ長調。ベートーヴェン交響曲第7番の主調。
Fugue 19 in A major (3 voices), BWV 864
a 3.【仕組み】休符で始まる変則的なリズムを持つ主題が9/8拍子の波に乗り、軽妙な重なりを見せる個性的なフーガ。
【位置づけ】
Prelude 20 in A minor, BWV 865
a 2.【仕組み】鋭いパッセージが両手で休みなく受け渡され、わずか1分足らずで激しく燃え尽きる劇的トッカータ。
【位置づけ】イ短調(調号なし)。母港C majorの平行短調。
Fugue 20 in A minor (4 voices), BWV 865
a 4.【仕組み】全第1巻の中で小節数・演奏時間ともに最大級の規模を誇り、後半の密集ストレットと低音の保続音(ペダル・ポイント)が圧巻の迫力を生む。
【位置づけ】
Prelude 21 in Bb major, BWV 866
a 2.【仕組み】急速な分散和音の連続から、後半は自由な即興的カデンツァへと雪崩れ込む極めて人気の高いヴィルトゥオーソ曲。
【位置づけ】変ロ長調(2フラット)。華やかで開放的な調性。
Fugue 21 in Bb major (3 voices), BWV 866
a 3.【仕組み】軽快な主題に2つの決まった対旋律が寄り添い、終始明るく爽快なテンポで駆け抜ける。
【位置づけ】
Prelude 22 in Bb minor, BWV 867
a 5.【仕組み】バッハの受難曲の合唱を想起させる、深く荘厳な和音と半音階の嘆きに満ちた祈りの前奏曲。
【位置づけ】変ロ短調。ショパンの葬送ソナタにも通じる深い悲愴。
Fugue 22 in Bb minor (5 voices), BWV 867
a 5.【仕組み】ルネサンスのア・カペラ合唱のような荘厳さを持ち、5つの声部がゆっくりと波のように押し寄せる至高の対位法。
【位置づけ】BWV 849(C# minor)と並び立つ第1巻の双璧。
Prelude 23 in B major, BWV 868
a 4.【仕組み】わずか19小節の中に、長調の旅の終点を祝福するような穏やかで純度の高い和声美が凝縮されている。
【位置づけ】ロ長調。五度圏上でも最もシャープの多い極限の長調。
Fugue 23 in B major (4 voices), BWV 868
a 4.【仕組み】古風で落ち着いた主題が、端正な対位法の手法によって過不足なく編み上げられた純度の高い4声フーガ。
【位置づけ】
Prelude 24 in B minor, BWV 869
a 3.【仕組み】通奏低音の絶え間ない歩みの上で、2つの高音部が半音階の不協和音を重ねて痛切に嘆く、第1巻最長のアダージョ。
【位置づけ】ロ短調。ロ短調ミサ曲にも通じる、バッハにとっての「究極の祈りの調性」。
Fugue 24 in B minor (4 voices), BWV 869
a 4.【仕組み】1オクターブ内の全12半音のうち11音を含む長大かつ深遠な半音階的主題による4声フーガ。平均律によって全調が開かれたことへの厳粛なる回答。
【位置づけ】BWV 869。全48曲の終着点。