フォーク
大西洋を渡った英国系移民がアパラチア山脈の厳しい暮らしの中で歌い継いだ、物語詩(バラッド)の伝統。哀愁あるメロディとフィドルやバンジョーによる古い響きは、オールドタイム(Old-Time)の山岳合奏として受け継がれ、のちのカントリーやブルーグラスの母体となった。カーター・ファミリーの「Wildwood Flower」は、この伝承歌を大衆録音へ定着させた代表例。
このジャンルの楽曲
第30変奏 クォドリベット(大衆俗謡の再定義)
酒場の鼻歌を教会・宮廷の最高峰であるポリフォニーへと合流させ、厳格な数学的秩序をあたたかな人間味で包み込んでアリアへと還流させるバッハ流の再定義。
Daddy, You Been on My Mind
ディランの手元で眠っていたデモ曲を、ジョーン・バエズが持ち前の清らかな歌唱と品格あるアレンジによって、崇高で美しいフォーク・クラシックへと昇華させた決定打。
Baby, You've Been on My Mind
ボブ・ディランの乾いた自省的フォークを、瑞々しいカントリー・ビートと豊かな歌声で包み込み、女性による最初期のウェストコースト・カントリー・ロックへと昇華させた記念碑的トラック。
花はどこへ行った
集会の循環詩を、都会的な三部ハーモニーとアコースティック対位法で磨き上げ、60年代フォーク・リバイバルを牽引する全米規模のスタンダードへと昇華させた決定打。
The Windmills of Your Mind
ミシェル・ルグラン作曲のアカデミー賞受賞劇中歌を、ダスティ・スプリングフィールドがアメリカ南部メンフィスの音響空間で妖艶なソウル・バラードへと再定義した歴史的録音。
I Never Will Marry
アパラチアの山岳に眠っていた伝承バラッドが、1977年のロック・アルバム上で、ドリー・パートンのハイ・ロンサム・ハーモニーを伴う現代最高峰のアコースティック・デュエットとして再定義された。
The Coo Coo Bird
アパラチアの孤高の山岳民謡が、1960年代後半の西海岸サイケデリック・ロックへと脱文脈化・再定義された。
オールド・ディキシー・ダウン
アメリカーナの敗戦ドキュメンタリーが、全米チャートを制覇するフォーク・ポップの哀悼歌へと再定義された。
戦争の親玉
60年代の静かな弾き語りプロテストが、90年代オルタナ世代の生々しいアコースティック咆哮へと再定義された。
オクラホマ・ミキサー
アパラチアのフィドル・ブレイクダウンが、戦後日本の教育・レクリエーション規格『オクラホマ・ミキサー』へと再定義された。
ジョン・ヘンリーのバラッド
口頭伝承の労働バラッドが、ジョニー・キャッシュの叙事詩的コンセプチュアル・カントリーへと再定義された。
I'll Overcome Some Day
教会の個人的な信仰歌が、ジョーン・バエズのワシントン大行進を通じて、集団的抵抗の行進アンセムへと主語ごと転換された。
Blowin' in the Wind
ディランの問いかけが、ジョーン・バエズの声と運動の現場を通じて、世界で唱和される公民権アンセムへと昇華された。
The House of the Rising Sun
アパラチアの伝承悔恨歌が、ジョーン・バエズのアコースティック解釈によって気高きフォーク・クラシックへ昇華され、後のディランやアニマルズが参照する原典となった。
Different Drum
素朴なブルーグラス・フォークから、ハープシコードと瑞々しいボーカルが躍動するバロック・フォーク・ロックへ再定義。
Mr. Tambourine Man
アコースティックな物語詩としてフォークの詩世界を極めた一曲。フォーク・ロック誕生の歌の形側の源流。
Wildwood Flower
山岳の家庭で受け継がれた英国系伝承歌が、カーター・スクラッチ奏法とともに大衆録音へ定着した。